統合失調症になったが数年前に寛解した
本当に統合失調症なのか疑わしい部分があるが、統合失調症なのだろう。
僕は別に大して悲観はしていない。
というのも、1ヶ月で寛解したからだ。
カレンダーは人の顔が並び、病院の観葉植物の葉っぱは拳銃に見えたりした。
天井には銃口を向ける知らないおじさんの影があり、蛍光灯の影をFGOのマシュ・キリエライトと誤認する。
さらに、野球中継のスタメン発表が全員同じ名前になる。
カレンダーを見ていると、「今日、執行しにくる」という幻聴が聞こえた。
文字が浮いて見えた。一番鬱陶しいのが携帯電話がベッドの下で鳴り響いたことだ。
そんな状態だったのだが、床屋だったり書店だったりショッピングに出掛けたりした。
カーテンには黒い影があり、幻聴が「プロジェクションマッピングだ」と囁いた。
この幻聴は極めてアホだ。当然ながら、風呂場に入ったらここは風呂場だと教えてくれる。なんと律儀なのか。
バイキングでは、同級生が出演していると誤認した。
味噌汁の具材が人の顔になり、四日間処方薬を上手く飲めなかった。
天井やベランダから人の声が聞こえた。
そして、全てパニックに陥った僕は、認知機能の低下による「記憶障害」を発症した。
ただ、僕はラッキーだったかもしれない。《自分で統合失調症と気づいた》からだ。
女性の幻覚が手招きする。部屋に女性は居ないとわかっていても、怖かった。
「打ったーホームラン」が四六時中聞こえ、心療内科の医者からは「だめですね」と言われた。
言葉を発せなかった。
何が幻聴かわからなかったからだ。
幻聴に「東京郊外でお前の心の声を流している」と恫喝された。僕の幻聴は、組織だの警察だの知らない人だのは話さなかった。
書店のBGMは知らないBGMに変わっていた。
普通、書店のBGMはわからないのだが、明らかに曲調が違うBGMが流れて、慌てて書店を出た。
お尻からも音が聞こえる。クスクス等の笑い声ではなく、具体的なものだ。
物にぶつかれば、器物損壊罪と幻聴が呟く。しかし、精神科に通ってから1週間幻聴は続いた。
一番辛いのは自分の描いたイラストが浮かび上がることであった。病院のドアにもイラストが浮かぶし、風呂場でも幻聴は聞こえてしまう。
トイレのドアが壊れたように見えたりした。
実際問題、拳銃など所持していないし、違法な物も所持していない。
寝室にギロチンや断頭台の幻覚を見た。それどころか、ベッドの下の携帯電話を本気で信じた。
血だらけとかそう言った幻覚はない。幻覚幻聴にしては作りが甘い。幻覚は本人の知能に比例するのかもしれない。
いきなり、プロジェクションマッピングが出てくるとか非科学的であろう。
あろうことか、「プロジェクションマッピングでお前の風呂が外に映っている」。と幻聴は言った。
どこからプロジェクションマッピングを用意したのかと具体的な質問をするべきだが、そこまでする余裕はなかった。
プロジェクションマッピングが頭の中にあったのだとしか思えない。幻覚は幻聴と連動していた。
病院に行くと、「そうきたか」と納得の幻聴が聞こえた。「さ、そのまま入院ですよ」と幻聴が「大勝利」を宣言した。
運が良いことに、統合失調症について詳しく知っていたことが改善に繋がった。
病院に入院しなかった。僕は回復すると踏んでいた。なぜなら、病院に行く途中で回復し、幻覚は綺麗に消えていたからだ。
幻覚は無くなった。
医者との受け答えもスムーズにできるようになった。自宅での療養という決断に至った。
初めは薬があれで量が増えたが、1週間程で幻聴も消えてなくなった。